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【解説】不登校への対応はどう変わるか 文科省「協力者会議」が最終報告

昨年9月から、10年ぶりに不登校政策の見直しについて審議していた、文部科学省の「不登校問題に関する調査研究協力者会議」は4月11日、最終報告となる「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」をまとめ、公表しました。

同会議は、増加の一途をたどる不登校に歯止めがかからないことを、「憂慮すべき状況にある」として、尾木和英・東京女子体育大学教授を主査に、専門家など16人で構成、専門家や学校現場、フリースクール代表者などへのヒアリングや、全国4000人の不登校の子どもを持つ保護者へのアンケート、一般への意見募集(パブリックコメント)を経て、今年3月までに14回の審議を重ねてきました。

当初、委員の中から、「親の社会性が欠如し、子どもに強制ができず、子どもを甘やかしすぎている」「不登校を容認する風潮がある。『どの子にもおこりうる』というのを、起きても仕方ない、と誤解している」「子どもが動くまで待つ姿勢が強いと、復帰の時期を逃す」など、家庭に不登校の原因を押し付け、学校復帰を強化するべきだとの意見が相次ぎ、「待つ」という姿勢を改め、積極的な働きかけにより学校復帰をすすめる方向での議論が進みました。

こうした同会議の動きに対して、全国の親の会やフリースクール関係者など、不登校の当事者たちは、東京と大阪で不登校政策を考える緊急集会を開き、「子どもの意見を採り入れない『学校復帰強化』に反対するアピール」を採択し、「不登校政策を考える連絡会議」を結成、アピールへの賛同を募るとともに、文部科学省や同会議委員への働きかけを行うなどの運動を展開、アピールへの賛同者は最終的に4000人を超えました。

また、1月12日から14日までに岐阜県・名古屋市で開かれた、全日本教職員組合(全教)などが主催した教育研究全国集会の不登校関係の分科会でも、親や教師、不登校を経験した若者などから、厳しい批判や疑問の声が相次ぎ、登校拒否・不登校問題全国連絡会が、文部科学省と「不登校問題に関する調査研究協力者会議」委員に、当事者の声をよく聞いて、時間をかけた十分な議論を求める要望書を提出。さらに、「連絡会議」有志と文科省「協力者会議」担当職員が2回にわたって意見交換するなど、多くの不登校の当事者の声が文科省と協力者会議委員に届けられました。

かなり生かされた当事者の声

こうした運動は、同会議の審議に大きな影響を与え、意見公募が行われた「中間まとめ」に大幅な加筆、訂正が行われ、「不登校問題」という言葉が、「児童生徒の行為すべてが問題行動と決めつけるような誤解を避けるため使用を控える」という記述をはじめ、学校からの働きかけが、かえって当事者を追い詰め、事態を悪化する場合があることを度々指摘し、「働きかけ」を重視しながらも、「個々の状況に応じて対応する」ことを強調しています。このほか、「適応指導教室」という名称が「適応」のみを強調しているとして、「学習支援・相談センター」等に変更するよう提言しているなど、当事者の声や実態がかなり反映されたものになりました。

また、「登校への働きかけの在り方を考えるに当たっては、不登校の経験者等、当事者の声に耳を傾けることも大切」「支援するだけでなく、親の会に教員やスクールカウンセラーが積極的に参加し、保護者の経験から学ぶなど、関係者が相互に意見交換をするといった姿勢も大切」など、学校と当事者との対等性や「当事者に学ぶ」という姿勢を強調したり、子どもの権利条約の「最善の利益」という言葉を使用するなど、従来の文部科学省関係の文書にはない部分もあります。

なおも残る不安

しかし、「学校に登校するという結果のみを最終目標にするのではない」と学校復帰のみにこだわらない姿勢を示してはいますが、「児童生徒の将来の社会的自立」に当たっての学校教育の重要性を強調するなど、「社会的自立」のためには学校復帰が前提というように理解されると、学校復帰への圧力が再び強まる恐れもあります。

「あくまで児童生徒の学校への復帰を目指して支援策が講ぜられる必要がある」とした11年前の報告よりは、トーンが弱まっているとはいえ、具体的な支援策となると、どうやって子どもを学校に戻すかという点に主眼が置かれており、少なくない教育委員会が、不登校の減少に「数値目標」を掲げているといった現状とあいまって、「積極的な働きかけ」を「誤解」した学校現場で、「何が何でも学校へ」といった圧力が再び強まることは十分考えられます。

また、「保護者等からの要望」を前提とした「補充指導」や「原級留置」が、「校長の責任」で学校復帰への圧力として悪用される危険性もあり、現に埼玉県の公立小学校では、不登校の6年生を卒業式当日に卒業させず、6日間「補習」の後、年度末になってやっと卒業を認めるといった、「先取り」ともいえる状況も生じており、虐待(ネグレクト)状態にある場合の「保護者への出席督促」や、「あそび・非行型」に対する「毅然とした教育的指導」についても同様の懸念があります。

背景分析は不十分 誤解を生む恐れも

報告は、不登校の「背景」として、「近年の子どもたちの社会性等をめぐる課題」や「家庭の教育力の低下」などが、不登校との関係についての論証抜きに羅列するだけで、こうした現状の原因や背景の分析には手をつけていません。その一方で、競争や管理といった学校のあり方に関してはほとんどふれず、各方面から批判を受けている新学習指導要領の徹底を強調するなど、文科省の既存の文教政策を擁護する姿勢が目立ちます。

また、学習障害(LD)や注意欠陥/多動性障害(ADHD)、虐待との関係にも立ち入っていますが、一部の学校現場では、不登校の子どもに対して安易にLDやADHDのレッテルを貼る傾向も現れており、もっぱら子どもや親の側の「問題」ばかりが注目され、不登校の原因は家庭にあるとの誤解を生む恐れがあります。

学校現場は対応できるか

最終報告では、「状況に応じた対応」「見極め(アスメント)」など、学校現場に判断を大きく委ねたり、教員等の「親の会」への参加、「個別指導記録」など、教員の負担増となるような内容も多く含まれています。これまでも、「見守る」という姿勢にかこつけて、事実上放置しているような対応も少なくありませんでしたが、その背景には教員の多忙化の実態があり、学校5日制でますます多忙化が激しくなっている学校現場が、果たして報告のとおり対応できるかは疑問です。

また、報告ではNPOやフリースクール、「親の会」等の外部機関との連携やネットワークづくりを提言していますが、これらの不登校関係団体に対する学校や教育委員会相互の不信感、敵対意識は根強いものがあり、信頼関係の構築なしには到底実現しえず、学校や教育委員会に批判的でない団体のみと連携するなど、選別や囲い込みとなる恐れもあります。

その他、不登校担当教員の配置、養護教諭の複数配置、「適応指導教室」職員の常勤化など、予算措置が必要な提言も多く含まれていますが、少人数学級編制のように、国庫負担なしに地方財源に依存するようなことがあれば、結局絵に描いた餅になりかねません。

当事者の声を積極的に

報告は、いよいよ実施段階に入ります。報告に当事者の声が反映されたのは、多くの当事者の声を届ける運動の成果でした。今後、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、そして学校現場と具体化が進んでいくなかで、各地の親の会やフリースクールが、行政や学校、教師に当事者の声を積極的に届けることが、ますます重要になってくるといえます。

* 最終報告(文科省サイト)
* 最終報告(ワード形式)
* 最終報告(PDF形式)

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サイト内の参考ページ

文部科学省「協力者会議」公式サイト

参考サイト

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