| |||||
|
大学入学資格検定の見直しについて
〜社会において広く通用する「高等学校卒業程度認定試験」〜 (答申) 平成16年8月6日 中央教育審議会 はじめに 中央教育審議会は、平成15年10月に、文部科学大臣から「大学入学資格検定の在り方について」諮問を受け、「高等学校卒業程度の学力を認定する試験としての性格をより明確にすること、及び、各種職業資格の受験資格における取扱いなどにおいてより広く活用されるようにするための方策」について審議を行うこととなった。 これを踏まえ、本審議会は、平成15年11月に教育制度分科会の下に大学入学資格検定部会を設置して、集中的に審議を重ねてきた。 今回の答申は、これらの審議の結果を取りまとめて公表するものである。今後、すべての国民の方々に本答申の趣旨を御理解いただくとともに、本答申を受けて実施される新試験が社会全体において高く評価され、活用されるものとなるような取組が、行政、学校、企業等において進められることを望むものである。 I 大学入学資格検定を取り巻く現状〔受検者層の変化〕大学入学資格検定(以下「大検」という。)は、昭和26年に、経済的理由などにより高等学校に進学できなかった勤労青少年を対象に大学入学資格を付与することを目的に発足して以来、大学進学などへの途を開く制度として機能してきている。 近年、高等学校進学率の上昇に伴い勤労青少年の受検割合が逐年低下するとともに、高等学校中途退学者(以下「高校中退者」という。)が年間約9〜10万人という状況の中で大検の受検者の6割程度を高校中退者が占めるようになるなど、創設当時と比べ受検者の態様が大きく変化してきている。 〔大学入学資格の弾力化〕大学入学資格については、教育の国際化の観点や、社会人や様々な学習歴を有する者への入学機会の拡大等を図る観点から、平成15年9月に制度改正が行われた。 この結果、大学の個別審査により、高等学校卒業と同等以上の学力があると認められる者に当該大学への入学資格を認めることが可能となった。 この度の大学入学資格の弾力化は、大検が後期中等教育に代わる唯一の高等教育への経路ではなくなったことを意味し、大検のその他の機能にも着目した見直しを行う好機となった。 〔大検の社会における活用〕高等学校への進学率が97%に達する中で、実社会において高等学校を卒業していないことが就職及びその後の処遇等において不利益となる場合がある。毎年約9〜10万人に上る高校中退者がいる状況の下、これらの者の職業生活への接続についてより積極的な取組が必要である。 このため、文部科学省においては、高校中退者の職業生活等への接続を円滑にする観点から、大検合格が各種職業資格の受験資格や採用後の処遇において高等学校卒業と同等に取り扱われるように各方面の理解を求めてきており、一定の効果があがっている。しかし、大学入学資格を得るという目的への認識が強いあまり、高等学校卒業程度と同等以上の学力を認定する検定試験としての役割があることについて周知が十分には進んでおらず、依然として一部には高等学校卒業と同等に取り扱われていない事例も残っている。 〔高等学校の生徒の多様化と高等学校教育の弾力化〕高等学校に進学する者の志望動機や興味、関心など、高校生の意識や学習への取組が多様化する中で、高校中退者の中退理由のうち、目的意識や学習意欲が不十分なまま入学したり、不本意入学したことに起因することが多いと考えられる「学校不適応」、「進路変更」などが6割程度を占めるようになっているという実態もある。このような状況の下、多様化する高校生に高等学校教育が柔軟に対応することが必要になっており、近年、中高一貫教育の導入、総合学科や単位制高等学校の拡充など、制度の多様化、弾力化が進められている。 II 基本的な考え方我が国は、国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような生涯学習社会の実現を目指している。 大検は、何らかの理由で、高等学校を卒業できなかった者の学習成果を適切に評価し、大学入学資格を付与することで生涯学習社会の理念に沿った役割を果たしてきている。新試験については、さらに、受験対象者を広げるとともに、大学等への進学、就職いずれにも活用できるような高等学校卒業程度の学力を認定する試験としての性格を明確にすることで、学習の成果がより一層適切に評価されるようにする必要がある。 これらを踏まえ、以下の3つの点を基本的な考え方とするべきである。 大学の個別の審査による入学資格の付与は、個別審査を行った大学のみに有効とされるものである。このため、試験の合格者に対して、一律に大学入学資格を付与するというこれまでの大検の機能を維持することが必要である。 高等学校の進学率が97%に達する中で、年間約9〜10万人の高校中退者がいるが、そのうち大学入学資格検定を受検するのは2割以下に留まっている。生涯学習社会においては、高等学校中途退学者を含め、希望する者が、いつでも学校教育の場に戻れるような体制及び環境を整備していくことが必要である。 一方で、様々な理由で高等学校という教育システムでは対応できない者へのセーフティネット(安全網)としても新試験がより十全に機能し、より多くの者が高等教育や職業への途を切り開く上で新試験を活用しやすいようにする必要がある。 また、現在受検を認めていない全日制高等学校の在学生にも受験機会を拡大するなど、より広く活用される試験にする必要がある。その適切かつ有効な活用が高等学校教育の一層の弾力化にもつながることが期待される。 高等学校卒業程度の学力を認定する試験としての性格をより明確にし、その合格者が各種職業資格や採用試験の受験資格、採用後の処遇においてより広く高等学校卒業者と同様に扱われるようにする必要がある。 そのために新試験の名称を「高等学校卒業程度認定試験」とするとともに、具体的な方策を検討する必要がある。 III 新試験の内容について1 受験科目・水準について(1) 教科・科目について 新試験では、就職や進学などいずれの進路を選択する場合においても、必要となる学力を問うものとすることが必要である。 年間約9〜10万人の高校中退者のうち、大検受検者は、わずか約1〜2万人に留まっているが、これはアンケート結果などから、必受検科目数が多いことなどに起因しているものと考えられる。 一方で、新試験が高等学校卒業程度の学力を認定するものとして社会に広く受け入れられるよう、多様化が進む高等学校教育において全ての高等学校生に共通に必要な教育内容を包含することが必要である。 このため、新試験においては、高等学校学習指導要領において全ての生徒に履修させる教科の範囲内で、認定する学力水準は維持しつつも、受験者の負担を増やさないように受験科目を精選したり、ペーパー試験のみでの評価になじまない実技的な要素が強い教科を削減するなどして、高校中退者等が受験しやすい科目構成とすることが必要である。 なお、平成11年告示の高等学校学習指導要領において必履修とされた英語については、大学等における教育や、社会生活における重要性を踏まえ、全員が受験する教科とする必要がある。 以上を勘案し、新試験は、国語、地理歴史、公民、数学、理科、英語の6教科を必ず受験するものとして、構成することが適当である。 また、受験教科の変更により一部教科に既に合格している者などが不利にならないように適切な経過措置を講ずる必要がある。 (2) 問題の内容、水準及び合格水準について 現行の大検が、選抜試験ではなく資格試験であることや、高等学校卒業と同等以上の学力を認定する国の検定として社会的にも評価を得ていることを踏まえ、新試験の問題の水準及び合格水準を現行の大検から大きく変えないようにするべきである。 また、新試験は、現行の大検同様に高等学校卒業と同程度の学力を認定するという到達度試験の性格を持つことから、絶対評価の考え方を基本として、到達の程度、問題の難易度等を総合的に判断して合格水準を設定するべきである。 (3) 受験科目の免除 生涯学習の成果を適切に評価する観点から高等学校等において受験科目の単位を修得した者及び「知識及び技能に関する審査」に合格した者については、現行の大検と同様に受験科目に相当するものについて科目の免除を引き続き行うことが適当である。 2 受験対象者について現行の大検は、働きながら学ぶ定時制又は通信制高等学校の生徒の負担を考え、これらの生徒には大検の受検を認めているが、全日制に在学する生徒の受検を認めていない。 しかし、近年、夜間の定時制高校においては昼間働いて夜学ぶという勤労青年の割合が著しく減少するなど制度創設当初とは生徒の実態に変化が生じている。このため、定時制高校も多部制や単位制の高校が設置されるなどしており、生徒の就学形態も多様化し、全日制の高校との違いがかなり小さくなっているケースも増えている。 全日制高等学校においても、生徒の能力・適性・興味・関心等の多様化の実態を踏まえ、生徒に目標を与えて意欲を喚起したり、学校生活にうまく適応できない生徒の学習成果を評価したりする際の一方策として新試験を活用できるようにするべきである。 これらのことから、定時制、通信制、全日制全ての高等学校の在学生に新試験の受験資格を与えるべきである。 あわせて、学校長の判断で受験科目に対応する新試験の合格科目について単位認定できる制度を全日制高等学校にも拡大するなどして、生徒の多様な学習成果が評価されるような機会を提供するべきである。 なお、具体的な仕組みについては、高等学校教育の在り方にも照らしつつ検討していくことが必要である。 3 年齢制限について現行の大検は、18歳未満で必要科目に全て合格したとしても、満18歳に達した翌日まで大検の合格者とならないこととしている(いわゆる飛び入学を除く。)。 いわゆる飛び入学を一般化して17歳から合格とするべきであるなどといった意見もあったが、この点については、高等学校教育及び大学などの高等教育への接続の問題として我が国の学校教育制度に大きな影響を与えることから、今後、学校教育制度全体の中で慎重に検討するべき課題である。 このため、新試験においては、現行の大検どおりの年齢制限を課することとする。 IV 社会的認知度を高めるための方策文部科学省は、総務省、厚生労働省や経済団体などと連携しつつ、地方自治体や企業等へ積極的に働きかけることで新試験及びその合格者に対する社会的な認知度を上げることが必要である。 また、実効性を担保するためには、地方自治体や企業等の職員の採用、処遇に関する規則等において、新試験の合格が「高等学校卒業程度と同等」と位置づけられるべきであり、そのためにも積極的な呼びかけが必要である。 さらに、文部科学省は新試験に対する社会的認知度を検証するために、地方自治体や企業等に対して定期的な調査を実施すべきである。 また、都道府県教育委員会等を通じて、全日制高等学校の在学生が新試験を受験する場合の手続き、合格科目の単位認定の手続き等の整備が高等学校等において、図られるよう適切に周知することが必要である。 その際、各都道府県教育委員会等の進路指導担当指導主事を対象とした会議などを通じて、高等学校教員への周知を図ることが必要である。 さらに、高等学校在学者及び高校中退者に対して都道府県教育委員会から新試験の概要等について積極的に情報提供を行うなどして制度に関する理解を図ることが必要である。その際、図書館などの情報発信機能を活用することも検討するべきである。なお、国においては、地方自治体が行う優れた取組に関する情報を広めるなどして支援を行うことが大切である。 また、大学入学資格検定の合格を経て社会的に活躍している人々の事例を紹介するなど効果的なPRを行うことが必要である。 V 業務の外部委託国で実施する業務と外部に委託できる業務を区分した上で可能な業務から外部機関に委託するべきである。なお、これまで独立行政法人大学入試センターが機密性・公平性を確保しつつ、大規模な試験を実施している実績を有しており、こうした経験等も参考に、委託先については、秘密保持体制、専門的な実施能力を有する公共的機関等を選定することが必要である。 また、新試験の実施会場については、受験生の利便性及び経済的負担の軽減に配慮し、現行の大検と同様に全国47会場で実施するべきであり、引き続き地方自治体の協力が必要である。 VI その他(部会等で議論された課題等)部会等における議論では、新試験について、「あくまでも高等学校卒業と同等以上の学力認定にとどめるべきであるという意見」と、「高等学校卒業資格の付与まで行うべきであるとの意見」の両論があり、多くの時間を割いて検討が行われた。将来への問題提起として、極めて有意義な議論であった。 各々の主な意見は次のとおりである。 ○ あくまでも高等学校卒業と同等以上の学力認定にとどめるべきであるという意見
○ 高等学校卒業資格の付与まで行うべきであるとの意見
両方の意見に傾聴すべき点が多いが、高等学校の卒業要件の修得単位数と新試験の相当単位数の格差や、高等学校が知・徳・体のバランスのとれた教育を目指すものであることを踏まえ、以下のとおり2つの方針とすることが妥当であると判断した。
なお、新試験合格者に高等学校卒業資格を付与するかどうかについては、上記のとおり、学校教育制度全体との関係について慎重な審議が必要であることはもちろんのことであるが、さらに全課程の修了を学校長が認定する制度をとっている現行の高等学校制度の下で、どのような制度設計が可能かなど技術的にも多くの論点があることが分かった。 この関連で、新試験により、生涯学習社会における学習の評価の仕組みは一段と充実するが、さらに一歩進んで、国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習の機会を選択して、高等学校レベルの学力の取得を目的として、学ぶことができるよう、単位累積制度などの新システムの必要性も検討するべきであるとの意見があった。 さらに、我が国においては、大学入試に係る試験が複数あることから、新試験と大学入試センター試験との関係を含め、今後の大学入試の在り方を検討するべきであるとの意見があった。 また、全ての高等学校在学生を対象に学習成果を図る学力認定試験を実施し、その成果を高等学校の卒業要件や大学入学の基礎資格とするなどして高校生にしっかりした学力を身に付けさせる方向を目指すべきであるとの意見もあった。 おわりに今回の答申では、従来の大学入学資格検定の役割を維持しつつも、高校中退者等が新試験を利用しやすいものとするとともに、学校や職業への接続をより円滑にするための方策について提言を行った。 生涯学習社会の構築を目指し、新試験を生涯学習社会における様々な学習成果を適切に評価する制度として十全に機能するよう提言に沿って具体的措置を講ずることが必要である。なお、高等学校卒業資格の付与については、慎重な議論の上、結論としては、現時点では適切でないと判断したが、社会的通用性を高める努力により、高等学校卒業資格付与と同様の効果を確保できるものと期待している。 また、新試験の実施によって、現在の高等学校教育の意義・重要性は何ら変わるものではない。その果たす役割の重要性にかんがみ、新試験の実施を一つの契機として、高等学校教育の一層の充実に努められることを、関係者にお願いしたい。 新試験が、社会全体において高く評価されるとともに、より多くの人々に活用されるものとなることを期待している。 |
|
| このホームページはJava Scriptを使用しています。一部機種では正常に表示できない場合があります。 |
| Copyright(C)2002-2008FUTURE 不登校を考える会 著作権・リンクについて |